リクルーティング ピックアップ 公開日:2024/01/25 更新日:2024/01/25

採用基準のつくり方と面接実務での活かし方

採用基準とは、候補者が企業の文化と戦略に合致するかどうかを判断する基準を指します。 当記事では、採用基準をつくることのメリットや、実際の面接業務での活用方法について、お伝えします。

採用基準とは

採用基準は、企業が求職者を評価し、誰を採用するか選択する際のガイドラインです。この基準は様々な要素を組み合わせて作成され、技術的スキル、経験、教育背景、個人的特性、そして価値観などが含まれます。

これにより、企業は「理想の候補者」像を明確にし、選考プロセスを効率化します。採用基準は、候補者が企業の文化と戦略に合致するかどうかを判断するための重要なツールであり、正しい人材の確保に不可欠です。

採用したい「優秀な人材」は千差万別

「優秀な人材」の定義は、業種や職種、企業文化によって大きく異なります。例えば、創造性を重視するデザイナー会社では、従来の業務遂行能力よりも革新的な思考が求められることがあります。一方、安全性を最優先する航空業界では、規則の厳格な遵守と細かな注意力が必要とされるでしょう。

企業の目指す方向性と採用基準は密接に連携している必要があります。輝かしい経歴やスキルを持つ候補者でも、企業の文化や目標に合致しなければ、最適な人材とは言えません。採用基準は、企業の長期的な成功を支えるために、その企業固有のニーズに合わせてカスタマイズされることで価値を発揮します。

 

採用基準を設けるメリット

採用基準の設定は、企業の採用活動において多くのメリットをもたらします。明確な基準を設けることによって、選考プロセスが公平かつ効率的になり、企業のブランドイメージや採用効率を向上させることができます。

自社に合った候補者を公平に判断

明確な採用基準を設けることで、候補者を公平に、一貫した方法で評価することが可能になります。これにより、選考過程における個人の偏見や主観の影響を抑え、多様性と公平性を促進します。

特にオンライン採用が増加している現代において、対面での「雰囲気」に依存しない客観的な評価が求められています。明確な基準に基づく評価は、誰もが納得できる公平な選考を実現し、企業のブランドイメージ向上に寄与します。

 採用チャネルの最適化

採用基準を明確にすることで、効果的な採用チャネルを特定し、リソースの配分を最適化できます。例えば、特定のスキルセットや経験が必要な場合、関連する業界イベントや専門職ネットワークを活用することが効果的です。

採用基準が不明瞭な状態では、不必要な広告掲載などの活動が増え、採用活動の長期化やコスト増を引き起こす可能性があります。明確な基準に基づく採用チャネルの選定は、採用コストの削減と効率の向上に直結します。

選考プロセスの合理化

採用基準を設定することで、選考プロセスが合理化されます。基準に基づいて候補者を迅速にふるい分けることで、選考にかかる時間と労力を削減し、最終的な採用決定の精度を高めることができます。採用基準に沿った質問を用意することで、面接時に候補者の適性を深く掘り下げることも可能になります。

 

採用基準の要素

採用基準を作成する際には、企業の目的と戦略に合わせて、候補者の経験、スキル、知識、コンピテンシー(行動特性)、性格面(価値観など)を総合的に考慮することが重要です。これらの要素をバランスよく組み合わせることで、企業にとって最適な人材を見極めることができます。

経験・スキル・知識

経験、スキル、知識は、候補者が仕事を効果的に遂行するために必要な基本要素です。これには具体的な職務経歴、専門知識、技術的な能力が含まれます。ただし、知識や能力といった要素は入社後に育成が可能なこともあるため、採用基準に絶対必要というわけではありません。

コンピテンシー(行動特性)

コンピテンシーは、仕事を行う上での行動特性や能力を指します。問題解決能力、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーションスキルなどが含まれます。候補者が業務にどう取り組み、困難な状況をどう乗り越えるかが重視されます。

たとえばマネージャー職では、チームを導きモチベーションを高める能力が特に重要です。コンピテンシーに基づいて人物像を組み立てることで、効果的な採用広報や選考戦略を考案することが可能になります。

性格面(価値観など)

性格面や価値観は、企業文化との適合性を評価する上で重要です。候補者の個性、働く動機、価値観、倫理観などは、仕事の遂行における基本的な姿勢に反映されます。企業文化に適合する人材を採用することで、チームの協調性が高まり、生産性が向上する可能性があります。

ただし、職務の遂行に影響しないような価値観については、評価の対象として適さないことに注意が必要です。

 

採用基準を作るときに気を付けるポイント

採用基準を策定する際には、効果的かつ公平な採用プロセスを実現するために、特定のポイントに注意を払うことが重要です。これらのポイントは採用活動の基本原則となり、適切な人材の確保に不可欠です。

現場の声を拾い上げる

採用基準の策定において、現場スタッフの意見を取り入れることは極めて重要です。現場スタッフは仕事において日常的に要求される能力と、いまのチームのニーズを最も深く理解しています。そのため、現場の意見を採用基準に反映させることで、実際の業務に即した適切な基準が形成されます。現場からのフィードバックは、理論だけでなく実務に基づいた効果的な採用基準を作る上で貴重な情報源となります。

経営方針に沿ったものにする

採用基準には、企業の経営方針や長期戦略を反映させることが望ましいです。企業の目指す将来像やビジョンに沿った人材を選出することで、組織全体の目標達成に貢献します。この一貫性は、採用される人材が組織に溶け込み、貢献するための基礎を作ります。

曖昧な表現ではなく、明確に言語化する

採用基準に含まれる「チャレンジ精神」や「コミュニケーション能力」などの抽象的な表現は、具体的な行動指標や成果に結び付けられないと主観的な評価に陥りやすいです。これらの特性を明確に定義し、具体的な事例や行動指標に基づいて評価することが重要です。このような具体性を持たせた採用基準の設定は、候補者の適性を公平に評価することを可能にします。

「チャレンジ精神」や「コミュニケーション能力」の落とし穴

採用広報でよく耳にする「チャレンジ精神」や「コミュニケーション能力」といった言葉は、その意味が組織や場面によって異なることがあり、注意が必要です。これらの言葉の解釈にズレがあると、選考時の評価や採用広報の戦略に影響を与える可能性があります。

たとえば、同じ企業の採用担当者同士でも、「チャレンジ精神」の解釈が異なっていることもあります。ある採用担当者はこれを「困難にもくじけずに取り組むこと」と定義し、高いストレス耐性と根気強さを重視するかもしれません。一方、別の担当者は「自分から率先して取り組むこと」と捉え、自発性を重視するかもしれません。

このように、本来別々のコンピテンシーであるはずの特性が、「チャレンジ精神」という言葉によって一緒くたにされると、選考時の評価にズレが生じます。

また、「コミュニケーション能力」についても同様の問題が生じます。

人によっては、この言葉を聞いて明るく誰とでもすぐに打ち解ける能力を想像するかもしれません。一方で、互いの利害が相反する状況で双方が納得する解決策を見つける交渉能力も、「コミュニケーション能力」の一形態です。

特に若手層などは「コミュニケーション能力」を前者の意味で理解することが多いため、企業が後者のような能力を求めている場合、その言葉を用いる際には慎重な表現が求められます。

不合格ラインと合格ラインを決める

採用基準には、明確な不合格ラインと合格ラインを設定することが求められます。この基準により、候補者を一貫した方法で評価することができ、選考プロセスの透明性と公正性を保つことができます。また、明確な基準は、候補者へのフィードバックや選考プロセスの改善にも役立ちます。

 就職差別になる項目は基準にしない

採用プロセスにおいては、性別、年齢、民族、宗教など、差別的な基準を設けることはできません。これらの基準は不公平な選考を生み出し、法的なリスクを引き起こす可能性があります。公平な採用を実現するためには、これらの差別的な要素を排除することが必要です。

就職差別につながる項目の一例

性別: 候補者の男性または女性であることに基づいた差別。

年齢: 特定の年齢層に属する候補者に対する差別。

民族や人種: 特定の民族や人種に属する候補者に対する差別。

宗教: 候補者の信仰する宗教に基づいた差別。

障がいの有無: 身体的または精神的な障がいの有無に基づいた差別。

性的指向: 候補者の性的指向に基づいた差別。

婚姻状況: 既婚、未婚、離婚など、候補者の婚姻状況に基づいた差別。

家族計画: 妊娠、出産計画、子育てなどの家族計画に関する事項。

国籍: 候補者の国籍や出身国に基づいた差別。

社会的背景: 候補者の経済的、社会的背景に基づいた差別。

健康状態: 一般的な健康状態や特定の健康問題に基づいた差別。

政治的見解: 候補者の政治的信条や見解に基づいた差別。

これらの項目は、個人の能力や職務遂行能力とは無関係であり、採用選考において考慮されるべきではありません。

採用プロセスにおいてこれらの項目に基づく差別を避けることは、公正な職場環境を促進し、多様性と包摂性を高めるために重要です。採用基準の策定は、公平性と効果性を確保するために、これらのポイントに注意を払いながら行う必要があります。

 

採用基準を実務に活かす方法

採用基準を実務に活かすことは、企業の採用効率と質を高める上で非常に重要です。書類選考、適性テスト、面接を通じて採用基準を適用する方法について説明します。

書類選考での見極め

書類選考の際は、履歴書や職務経歴書を通じて候補者の経験、スキル、資格を評価します。ここで重要なのは、事前に定めた採用基準に基づき、客観的かつ一貫性のある方法で書類を評価することです。特定の専門知識や業界経験が重要な場合は、これらが明確に記載されているかを確認します。書類選考は、候補者の経歴と能力を初期段階で確認するための重要なステップです。

適性テストでの見極め

適性テストは、候補者の能力や性格特性、職業的傾向を理解するための有効な方法です。採用基準に沿ったテストの選択が重要であり、例えばチームワークや問題解決スキルを重視する場合は、これらの能力を測定するテストを活用します。もしも職務上高いストレス耐性が求められる場合、圧迫面接など候補者の入社意向が弱まる可能性のある手法よりも、適性テストによる測定が適しています。適性テストにより、候補者の潜在能力や適性をより深く理解し、適切な人材を選抜することが可能になります。

面接での見極め

面接は、候補者の人間性やコミュニケーション能力を見極める絶好の機会です。採用基準に基づいた質問を準備し、候補者の回答から適合性を評価します。例えば、困難な状況への対応やチームでの経験、成果についての具体的な例を求めることができます。

また面接では、候補者の言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションや態度も重要な評価ポイントとなります。ですが面接がオンラインで行われる場合、非言語的なコミュニケーションは対面での実施に比べて伝わりにくくなる傾向があります。そのためオンライン面接では、採用基準を満たしているか確認するための質問を詳細に行い、より多くの言語情報を収集して面接の評価を出すことが重要になります。

採用基準の見直し

企業の成長と進化には、採用基準の定期的な見直しが不可欠です。時代や市場の変化に適応し、常に最適な人材を確保するため、採用基準は現実の業務環境に合わせて更新される必要があります。

入社した人材のパフォーマンスを採用基準に反映させる

入社した社員のパフォーマンスは、採用基準の有効性を評価するための重要な指標です。企業で働く社員の成果や業務適合度を分析し、その結果を採用基準の見直しに活かします。

例えば、特定のスキルや経験が業務成果に大きく寄与している場合、それらを採用基準に重視することを検討します。反対に、現行の基準が実際の業務と乖離している場合は、見直しを行うことが重要です。実際の業務に基づくデータと経験を活用することで、より適切な人材を見極めることが可能になります。

定期的な基準の見直しで陳腐化を防ぐ

採用基準は、市場動向、業界トレンド、技術進化など、外部環境の変化に応じて定期的に見直す必要があります。新しい技術や手法の出現により、市場に必要とされる新たなスキルセットが生じた場合、それまでの採用基準が陳腐化してしまう可能性があるためです。また、組織文化や価値観の変化も採用基準に反映させることで、効果的な人材確保が可能になります。

 

 

まとめ

採用基準の設定は、企業が目標、戦略に合った人材を確保し、組織の成長に貢献するために重要です。候補者のスキルや経験に加え、全体像を評価する枠組みを提供し、企業の特定のニーズに応じてカスタマイズする必要があります。これにより、効率的かつ公平な選考プロセスを実現し、企業のブランドイメージと採用効率が向上します。

採用基準の作成には、経験、スキル、知識だけでなく、コンピテンシーや性格面を含む多角的な評価が必要です。これらを適切に組み合わせることで、最適な人材を見極めることができます。採用基準の策定は、現場の声を取り入れ、経営方針に沿ったものを作成し、具体的に言語化することで、効果的かつ公平な採用プロセスを実現します。

書類選考、適性テスト、面接では、採用基準を効果的に適用し、候補者の真の能力と適合性を正確に評価します。これにより、企業は採用効率を高め、質の高い人材を確保し、競争力を強化し長期的な成功に貢献します。

採用基準の見直しは、市場や技術の進展に適応し競争力を維持するために重要です。業務パフォーマンスに基づく見直しと外部環境の変化に基づく定期的な更新は、最適な人材確保のための鍵となります。これにより、企業は長期的な成功を支える優秀な人材を確保し続けることができます。採用基準の見直しは、単なるルーチンではなく、成長と発展に不可欠な戦略的プロセスです。

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筆者:ナンバーズ株式会社

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