新卒採用の意義と成功のためのポイント
新卒採用とは?
新卒採用は、大学や専門学校などを卒業したばかりの人材を対象とした採用活動です。企業が新卒者を採用する主な理由は、未来のリーダーや専門家として長期的に活躍できる人材を育成するためです。
新卒採用の目的
新卒採用の主な目的は、組織の将来に貢献できる人材を育成することにあります。新卒者はまだ特定の企業文化や仕事のスタイルに染まっていないため、企業独自の文化や価値観、業務スタイルを容易に受け入れることができます。また、新しい知識や技術を取り入れ、組織内での革新を促す役割も期待されます。
中途採用との違い
中途採用は主に即戦力としての経験豊富な人材を求めるのに対し、新卒採用は長期的視点での人材育成と組織の活性化を目指しています。中途採用者はすでに社会人経験を持っているため、企業独自の文化に順応するのに時間がかかる場合がありますが、それに比べると新卒者は柔軟に適応しやすいという特徴があります。また中途採用は企業が望んだタイミングで自由に行うことができますが、新卒採用は学生が卒業するタイミングに合わせての採用となることもちがいの一つです。
新卒採用のメリット
既存社員への良い刺激になる
新卒採用により、既存の社員に新鮮な刺激と新しい視点がもたらされます。既存の若手社員にとっては新卒社員は後輩にあたるため、後輩の模範になろうという意識が生じることで、自身の振る舞いや業務への取り組み方を見直すきっかけになります。これは、既存の業務やプロセスへの新たなアイデアを生み出し、組織全体の創造性を向上させることにつながります。
中途採用に比べて低コスト
新卒採用は中途採用に比べてコストが低いとされています。これは、経験豊富な中途採用者に求められる高額な給与と比較して、新卒者の初期給与が比較的低く設定されていることによります。また、新卒者の採用に必要な投資は、中途採用に比べると相対的に少なくて済みます。新卒採用の場合はおおよそ同時期に学生が一斉に就職活動を行うため、企業側としては一度にアプローチがしやすいということなどが、コストを下げることができる要因です。
一度にまとめて研修・教育ができる
新卒採用では、多くの新入社員を一斉に教育することが可能です。これにより、効率的な研修を実施できるのと同時に、新入社員同士の連携の連帯感やチームワークを醸成する効果もあります。このように、新卒者の一斉研修は、個々の社員のスキル向上だけでなく、チームとしての協力関係を築く上で非常に有効です。
新卒採用のデメリット
新卒採用は多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらの課題を理解することは、より効果的な採用戦略を立てる上で重要です。
戦力化のための教育コストがかかる
新卒者は社会人としての経験が乏しいため、企業にとっては教育やトレーニングに多くの時間とコストを投じる必要があります。この教育コストは中途採用者に比べて高くなる傾向があり、特に未経験者に対する基本的なビジネススキルや業務知識の習得には相当の時間が必要となります。また、ビジネススキルの習得には自社の社員だけではなく外部の講師を招いての新人研修を行うケースもあり、その場合は追加のコストも必要となります。
採用フローが長期間になりやすい
新卒採用プロセスは通常、長期間にわたります。これには、広報活動、エントリー受付、選考プロセス、内定者フォローなどが含まれ、全てのフローを終えるまでに数ヵ月から1年以上かかることがあります。近年ではこの傾向はますます強まっており、この長期にわたる採用プロセスは、企業のリソースに負担をかけることがあります。
ポテンシャル採用となるため、ミスマッチも起きうる
新卒採用は多くの場合、完全未経験者の採用となっており、これはつまりポテンシャルを重視した採用ということになります。しかし、これにより実際の業務適性や職場への適応能力が見落とされることがあり、入社後に期待と異なる結果となるリスクが存在します。新卒者の高い離職率は、このようなミスマッチの結果であることが多いです。
景況感によって採用難度が変わる
新卒採用市場は経済状況や景況感に大きく影響を受けます。好景気の際には採用競争が激化し、優秀な人材を確保することが困難になることがあります。一方で、不景気時には採用活動が縮小する傾向があり、結果として長期的な人材計画に影響を与える可能性があります。リーマンショック後に一時的に落ち込んだ新卒採用の求人倍率ですが、そこから盛り返して以降は高止まりを続けています。新型コロナウイルスの影響によって一部の業界では採用活動が中断されるといった混乱もありましたが、新卒採用市場全体では依然として学生が優位である売り手市場が継続しています。
新卒採用には一定のリスクが伴いますが、これらのデメリットを理解し、対策を講じることで、企業はより効果的な新卒採用戦略を実施できます。教育プログラムの改善、適切な選考基準の設定、市場動向への柔軟な対応などが、これらの課題に対処するための重要なステップです。
新卒採用を成功させるためのポイント
新卒採用の成功は、戦略的な計画と実行に依存します。以下のポイントは、新卒採用を効果的に行うための重要なガイドラインを提供します。
何のための新卒採用なのか明確にする
まずは、新卒採用の目的を明確にすることが重要です。これには、組織のニーズや将来のビジョンをふまえた上で、新卒者に何を期待するのかを定めることが含まれます。この目的が明確であればあるほど、適切な人材を引き付けやすくなります。
求める人物像(ターゲット)を作る
採用するべき人物像を具体的に定義することが重要です。これには、専門的なスキル、個性、価値観、キャリア志向などが含まれます。明確な人物像を持つことで、適切な候補者を効率的に見つけることができます。
求める人物像のつくり方については、こちらのコラムでも紹介しています。
ターゲットに応じた採用手法を選ぶ
ターゲットとする新卒者に最適な採用手法を選ぶことが重要です。これには、ターゲットのニーズや興味に合わせた広報活動や選考プロセスの設計が含まれます。
ターゲットにとって自社の「何が」魅力に映るのかを考える
候補者にとって自社がどのように魅力的に映るかを理解することが重要です。企業文化、キャリアの成長機会、福利厚生など、自社の強みを明確にし、それを効果的に伝える必要があります。
. ターゲットに対して、「どうやって」自社の魅力を伝えるのか考える
どのようなチャネル(ソーシャルメディア、キャンパスイベント、オンラインセミナーなど)を使って、どのようにメッセージを伝えるかを検討します。ターゲットに合わせたコミュニケーション戦略が求められます。
通年での採用計画を立てる
母集団形成
ターゲットとする学生群から、関心をもってもらうための活動を行います。これには学校訪問、インターンシップの提供、キャリアフェアへの参加、ナビサイトやSNSの活用などが含まれます。現在の新卒市場では就職活動の開始時期に学生のアクションが集中するため、そのタイミングを逃すことなく効率的な活動を行うことが重要になります。
選考および内定出し
選考プロセスは、公平で透明性があり、かつ効率的でなければなりません。選考プロセスが長くなればなるほど学生が他社のオファーを受けて離脱してしまうリスクがあるため、必要以上に多い面接回数などは削減することが望ましいです。内定後は、候補者との継続的なコミュニケーションを通じて、入社意欲を維持する取り組を行うことが重要です。
内定者フォロー
内定者に対するフォローは、彼らが実際に入社するまでの間、企業への興味とエンゲージメントを保つために重要です。これには、内定者向けイベントの開催、メンターの割り当て、入社前の情報提供などが含まれます。就職活動を早期から行い内定を得た学生は、内定を得てから入社するまでの期間が長くなります。そのため、定期的な接点を持つことなどによって内定者をフォローし、事態を防ぐ取り組みが非常に重要になっています。
新卒採用の現在のトレンド
新卒採用における現在のトレンドは、就職市場の変化とともに進化し続けています。特に以下の点が注目されています。
オンラインでの就活
新型コロナウイルスの影響により、オンラインでの就職活動が急速に広まりました。企業説明会、面接、インターンシップなど、従来の対面式イベントがオンライン化しています。この変化は、学生と企業双方の採用活動へのアクセスを容易にし、地理的な制約を緩和しました。一方で、選考のプロセス全てがオンラインで行われた場合、実際の職場の雰囲気が分からないといった不安を感じてしまう学生もいます。そのため多くの企業では、オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッドな活動を行っています。
学生のアクションの分散
多様化する就職活動の手段により、学生たちのアクションも分散しています。キャリアフェア、社内見学、インターンシップ、オンラインセミナーなど、多岐にわたるチャンネルを通じて情報収集や活動を行っています。このトレンドは、企業が学生にアプローチする方法にも影響を及ぼしており、なにか特定のチャネルから安定的に多くの学生アプローチできるといったことが起きにくくなっています。そのため企業は複数のチャネルを常に保有し、どれかのチャネルでの施策が思ったほど効果的でなかった場合でも、その影響を最小限にできるようリスクを回避しています。
企業選びの軸の変化
学生たちの価値観の変化により、企業選びの軸も変わってきています。給与や福利厚生のみならず、企業の社会的責任(CSR)、企業文化、キャリア開発の機会、ワークライフバランスなど、より多角的な視点で企業を評価しています。このトレンドは、企業が学生に自社をどのようにアピールするかに影響を与えています。
ジョブ型雇用の拡大
従来の日本の雇用形態は、長期的な雇用と組織内でのキャリア形成に重きを置いていました。しかし、最近ではジョブ型雇用が注目され、特定の仕事(ジョブ)に対して適切な人材を配置することに重点を置く動きが見られます。このトレンドは、新卒者のキャリア形成やスキル開発にも影響を与え、企業にとっても個々の能力に応じた適切な人材管理が求められています。
これらのトレンドは、新卒採用の戦略を策定する際に考慮すべき重要な要素です。時代の変化に合わせた柔軟なアプローチが、新卒採用の成功を左右する可能性があります。
新卒採用にかかる工数は増加傾向
新卒採用に関連する工数は増加傾向にあります。これは、企業が優秀な人材を確保するために、さまざまな採用チャネルを活用し、学生に対するアピールを強化していることに起因しています。採用チャネルを拡大することは、採用コストを増加させる一因となりますが、優秀な人材の獲得は企業にとって非常に重要です。そのため、多くの企業では採用チャネルの削減よりも、採用工数の最適化と効率化を目指しています。
具体的な工数削減のポイントには、以下のようなものがあります:
- 採用イベントの開催: 企業説明会やインターンシップなどは採用工数がかかるものの、母集団形成に重要です。効率的な実施方法を検討することが必要です。
- 母集団の見直し: 応募者の質を見直し、採用予定人数に見合った選考を行うことで、追加募集による工数を削減できます。
- 応募者への対応: 応募者とのコミュニケーションは工数がかかるが、丁寧な対応が必要です。効率的な対応方法を検討します。
- 内定者フォロー: 内定者に対する継続的なフォローを行うことで、内定辞退を減らし、結果的に採用工数を削減できます。
これらのポイントを考慮し、採用プロセス全体の工数を見直すことが、企業にとっての大きな課題となっています。採用管理システム(ATS)の導入やアウトソーシング(RPO)の活用も、工数削減の有効な手段として考慮されています。これらのシステムやサービスを活用することで、採用活動の効率化とコスト削減が期待できます。
アウトソーシング(RPO)についてはこちらでも紹介しています。
まとめ
新卒採用は、企業が大学卒業予定者を採用するプロセスです。中途採用と異なり、新卒採用は自社の理念や文化になじみやすく、既存社員に新たな刺激を与え、低コストで大量の人材を一度に教育することができます。しかし、教育にコストがかかる、採用プロセスが長期にわたる、ポテンシャル採用によるミスマッチのリスク、景況感に左右されるなどのデメリットも存在します。
成功するためには、採用の目的を明確にし、求める人物像を定め、そのターゲットに適した採用手法を選ぶことが重要です。企業はターゲットにとっての魅力を考え、それをどう伝えるかを戦略的に計画し、通年での採用計画を立てる必要があります。これには、母集団形成、選考プロセス、内定者フォローなどが含まれます。
現在、新卒採用のトレンドとして、オンラインでの就職活動、学生の活動の分散、企業選びの軸の変化、ジョブ型雇用の拡大などが挙げられます。また、新卒採用に関する工数は増加傾向にあります。これらの要素を踏まえ、企業は効率的かつ効果的な新卒採用戦略を構築する必要があるでしょう。
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