ストレス ピックアップ 公開日:2023/09/11 更新日:2023/09/29

ストレスとメンタルヘルスの対応のあり方について(前半)

近年、経済・産業構造が変化する中で、仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者の割合が高くなっています。
身の回りを見ても、仕事やキャリア、また生活と仕事との両立などに関して悩んでいる方、また、心が不調なのではないか、と感じられる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、社会保険労務士・公認心理師・認定 AI ジェネラリストの松井 勇策先生から、現在におけるメンタルヘルスの重要性と、精神疾患からマインドフルネスの最前線までについて、お伝えします。

現在のメンタルヘルス関係への問題意識

現在の日本社会におけるストレスとメンタルヘルスの問題

近年、経済・産業構造が変化する中で、仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者の割合が高くなっています。身の回りを見ても、仕事やキャリア、また生活と仕事との両立などに関して悩んでいる方、また、心が不調なのではないか、と感じられる方は多いのではないでしょうか。ご自身にも、そういう時期があったのではないでしょうか。まずは、社会的な状況や課題を理解することが求められます。

こうしたメンタルヘルス課題の多くの場合の原因となるのが仕事や生活におけるストレスです。企業において働く方のストレスのもたらす課題に対応するには、ストレスの発生する構造と要因や、心身症と精神疾患など、心理や医療の基礎的な内容を理解することが大切です。特に「職業性ストレスモデル」がよく採り上げられています。このモデルの理解を通じ、ストレス要因から疾病に至るまでの構造を理解することで対応策が見えてきます。また、具体的なメンタルヘルス不調の内容を理解することも重要なことです。

その上で、 職場でのメンタルヘルスの対応策としては制度的な部分から、働く方々が注意すべき方法まで様々なものがあります。こうした様々な施策については、まず考え方、メンタルヘルスへの対応の戦略が最も重要です。その上で、代表的な制度や方法論である、「心の健康づくり計画」「健康経営」「ストレスチェック」「ラインケアとセルフケア」「マインドフルネス」を採り上げます。これらは、まず理解した上で企業で制度的に取り組むべきものの代表例です。ほかにも企業における対応の観点で留意すべき点を解説します。


メンタルヘルスの状況とストレス・ストレスと不調の構造について

近年の社会の中でのメンタルヘルス関係の状況

厚生労働省による「労働者健康状況調査」(2012)によると「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがある」労働者は60.9%を占めます。内容としては「職場環境の問題」と「仕事内容の量と質の問題」が、労働者の主なストレス要因です。

心の健康問題が大きな問題になっている中で、厚生労働省は2011年に、従来は四大疾病と呼ばれていた、がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病に、精神疾患を加えて「五大疾病」としました。しかし、五大疾病に精神疾患が加わり、産業現場をはじめ、社会的に本格的な精神疾患への対策が取りはじめられてからも、精神疾患の総数は増えています。

また、平成29年の厚生労働省による「死疾病調査」では、前回調査と比べ、「アルツハイマー病」「神経症障害とストレス関連障害及び身体表現性障害」「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」「統合失調症」が増加しました。


特に「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害」と「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」が10%を超える増加となり、特に大きく増加していることが注目されます。
この10%以上増加した分類以外については、老齢期のアルツハイマー病等を含め、その病気の方の生まれつきの素因や、外部の環境的な理由の影響が強いものといえます。
しかし、10%以上増加した2分類は心のストレスなどの影響が大きい疾患であると言え、社会背景や環境に原因がある可能性が高いと言えます。

しかし、別の厚生労働省のデータを見ると精神疾患の患者の方の平均在院日数の推移を見ると、一貫して入院期間は短くなり続けているというデータもあり、重症患者の方の数は減って、軽症者が非常に多くなっているという可能性も高いと言えます。

つまり、社会や環境に原因がありそうな精神疾患で比較的軽症のものが大きく増えているということです。こうした状況下において産業現場、職場での対応としては、基本的にどんな職場でもメンタルヘルス不調がいつでも発生し得るものという認識での予防策や、いざ不調者が出たときの対応方法の考慮が必要だと言えます。社会的にも企業的にも、メンタルヘルスの問題はとても難しい問題で、基礎となる事実もシンプルなものではありません。そういった考えの上に、企業におけるメンタルヘルスマネジメントを主体的に行っていく必要があるといえます。

ストレスと健康障害のモデル・ストレスの発生要因

ストレスとは、ストレッサー(ストレスの原因)とそれによって引き起こされるストレス反応(生体の諸バランスが崩れた状態)を合わせた総称です。ストレスは身体的・精神的な様々な症状や病気を引き起こす原因となると言われています。ストレスが疾患に繋がる仕組みや、ストレスが発生する年代ごとの特徴などについて解説します。

現在、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の職業性ストレスモデルが、ストレスから疾患に繋がるもっとも包括的なモデルだと言われています。(表)
メンタルヘルス不調は、その人に病気になる素質(個人的要因)があれば軽度のストレスでも起きることがあり、また素質が少なくても強いストレス環境では引き起こされることがあるということです。誰でも不調になり得るということと、生活・仕事・環境の改善やストレスへの対処で防ぐことができる、ということがポイントです。

ストレスが発生して疾病に繋がる仕組みは上記の通りですが、年代別にストレス要因が変わってくるとも言われています。青年期は人間関係・壮年期や中年期は人の管理や家庭状況・高年期は介護や自身の老化と健康問題などが主なストレス要因になると言われています。
青年期の企業における社会人教育や、高齢者のキャリア形成教育、健康上のフォロー施策などの重要度が増しています。

メンタルヘルスの不調について

メンタルヘルス不調は「誰でもなる可能性のあるものだ」という点が重要です。その上で、メンタルヘルス不調には心身症・精神疾患といった分類があります。これらを理解し、代表的な疾患について理解することも重要なことです。

心身症とは、心に何らかの要因があって胃潰瘍や狭心症など身体に現れる症状の総称です。心に症状が現れる精神疾患を含みません。それに対して、心の不健康な状態を総称して精神疾患といいます。心身症や精神疾患では素質によるものもありますが、環境要因によるものも多いです。仕事おいては、ストレスが重要な関係を持つと言われています。

心身症の種類

心身症になりやすい精神的な素質としては、感情の変化に鈍感なアレキシサイミア(失感情症)と呼ばれる傾向のある人や、過剰に仕事に依存するタイプの人、精力的で他者への攻撃性の高いタイプの人などは心身症を発症しやすいと言われています。典型的な症状には、以下のようなものがあります。

過敏性腸症候群・・・検査では異常が見られないものの、腹痛などを伴って便秘や下痢が続く病気です。
緊張性頭痛・・・検査では身体の異常が見られないのに起こる頭痛を特徴とする病気です。
摂食障害・・・食行動の異常による障害で、肥満への恐怖感が特徴です。拒食症と過食症の2つの分類があります。

精神疾患の種類

うつ病・・・全身倦怠感、頭重感、食欲不振などの身体症状が現れ、その後、興味の減退・快体験の喪失(シャワーなど心地よい体験が感じられなくなる)が2週間以上続くとうつ病が疑われる状態となります。最も多い精神疾患です。

躁うつ病(双極性障害)・・・うつ病に見られる「うつ状態」と、活発になったり怒りっぽくなったりする「躁状態」を繰り返す症状が特徴となる精神疾患です。

統合失調症・・・陽性症状と呼ばれる幻聴や妄想を特徴とし、陰性症状と呼ばれるコミュニケーション障害・意欲や自発性の欠如・引きこもり傾向などが障害として残りやすい精神疾患です。

精神疾患は他にも、アルコール依存症・パニック障害・適応障害・睡眠障害・発達障害などが代表的なものとして知られています。

企業における対応策については、後半に続きます。



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筆者:松井 勇策 社会保険労務士・公認心理師・認定 AI ジェネラリスト

フォレストコンサルティング経営人事フォーラム代表 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(専門領域:人的資本経営論等) (一社)人間能力開発機構 評議員 人的資本経営検定試験委員長(関連資格)GRI スタンダード国際認定・ISO30414 アセッサー 東京都社労士会 先進人事経営検討会議 議長 名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて組織人事コンサルティング、のち経営管理部門で法務・IT マ ネジメント・東証一部(当時)の上場監査等を行う。社労士・公認心理師の資格取得後に独立。人的資本経営の情報発信やコンサルティング・成長企業のIPO労務監査等を多く実施、ほか適性検査やエンゲージメントサーベイなどHR 関係商品の開発顧問、HR 関係メディア制作顧問等も複数行っている。

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